今年は7月30日の、3年ぶりにリアルで行われたアート・コ総会の終了後に特別企画が用意されていました。
「おしゃべりアートさんぽ」のメンバーによるパブリックアートの鑑賞会です。
今回は、アート・コ会員向けのスペシャルバージョンとして開催していただきました。
室内でのあらかじめ用意された画像を使ってのグループ鑑賞会と、実際に現地にその作品を観に行くグループ鑑賞会の2本立てのスペシャルバージョンでした。
まずは、作品の画像を使っての対話型の鑑賞会。選ばれた作品は東京メトロ茗荷谷駅からほど近い「カイザースラウテルン広場」という場所にある、巨大な魚を思わせる屋外彫刻兼遊具のような作品。(※1)
これをいろいろな方向から撮った画像を見て、参加者が感想を言いあいます。多人数で見て、考え、まるで謎解きのような発見の数々。グループで、鑑賞するからこその面白さがそこにあります。
しかも、今回使った画像は3Dで、周囲360度を見回したり、本来は見ることのないような位置からでも見ることができます。
炎天下の街に出ることなく、パブリックアートの鑑賞を楽しめるというだけでなく、現場では見ることが無いような位置からの鑑賞ができるという意味では、単に現場に行くことの代替としての画像というだけでない、新しい鑑賞を可能にしたという面白さが感じられました。
2作品目は、広場の少し先にある「文京区立教育の森公園」にある彫刻作品です。「さんぽ」ですから、いきなり画像が切り替わるのではなく、移動途中の様子も紹介。作品の設置されている周囲の様子もぐるりと見まわしてから鑑賞会のスタートです。
こちらはほぼ等身大の女性二人がベンチに腰かけているという、公園に溶け込んだ内容の作品。(※2)
先ほどの、どこかファンタジックな巨大魚(?)と比べると、写実的な作風です。そのせいか、参加者の興味は人物の外見から読み取れる心理描写に向かいました。こちらも、視る人それぞれによって想像された物語が語られることで、各参加者の作品の見え方も変わって行きます。
こうして、2作品の鑑賞が終わったところで室内の鑑賞会は終了。続いて地下鉄で後楽園駅から1つ隣の茗荷谷駅に移動し、いま画像で見た作品の実物を前に鑑賞会を行います。参加者は、夕方になって少し日差しも柔らかくなった街へ(虫よけスプレーも持って。笑)出発しました。
筆者は開催中の「アート・コってなんだ?」展でお留守番のため同行できませんでしたが、参加者からは、夕方の公園でのんびりゆったり鑑賞会を楽しんだという報告をもらいました。画像でじっくり見た後での、現場での鑑賞というのも興味深い体験だったようです。
関係者の皆さん、参加者の皆さん、お疲れさまでした。いろいろな意味で可能性を感じさせるイベントになったと思います。
※1 彫刻家・ゲルノト&バルバラ・ルンプフ・作「神話空間への招待」
という作品群の一つ。
※2 彫刻家・朝倉響子・作「フィオーナとアリアン」