2023/5/31 庭園美術館・ゆったり鑑賞日「建物公開2023 邸宅の記憶」展

2023/5/31 庭園美術館・ゆったり鑑賞日「建物公開2023 邸宅の記憶」展


東京都庭園美術館は、令和5年度より「あらゆる方にとって居心地の良い場となること」を目指して「フラットデー」という取り組みを始めました。
普段よりも来館者数を制限し、多くの人で賑わう美術館に不安がある方、車椅子の方や介助等が必要な方にも安心して過ごせる「ゆったり鑑賞日」を設定し、我々アート・コミュニケータが原則一組に一人付き添って鑑賞をサポートする「ゆったりツアー」を開催します。

昨年度までは、休館日に障害のある方向けに「特別鑑賞ツアー」というプログラムを行なっていましたが、「ゆったり鑑賞日」は通常の開館日に誰でも参加できる形で開かれる点が大きな違いです。

誰もがフラットに美術館を楽しめる環境づくりを目指します。

初めての開催となったこの日は、事前予約の方、偶然来館されてプログラムを知った方、障害をお持ちの方もそうではない方も、さまざまな方にご参加いただきました。
春の恒例企画「建物公開」は、アールデコ建築の魅力を存分に味わっていただける好機でもあり、庭園美術館の建造物にご興味をお持ちの方も多く来場されます。

特に今回は最上階の「ウインターガーデン」が4年ぶりの公開と知って楽しみに訪れた方もいらっしゃいました。
また「邸宅の記憶」というサブタイトルの通り「この邸宅の主であった朝香宮家の人々」に焦点が当てられ、宮邸時代の家具や調度を用いた邸宅空間を再現した展示も見どころでした。

ルネ・ラリック作のガラスレリーフ扉のあしらわれた正面玄関から大広間を臨み、アート・コミュニケータとの会話を交えて、邸宅に招かれたような気持ちになりながら館内を巡って当時の暮らしぶりに思いを馳せる様子がうかがえました。


壁面や内装材の見本を触って感じることのできるツール「さわる庭園美術館」は、見えない方にはもちろんのこと、建物自体が文化財として触れることができない館内にあって、素材の感触を楽しめると多くの方にも好評でした。


アート・コミュニケータからの問いをきっかけに、部屋ごとに異なるラジエーターカバーを見比べたり、床や壁面の素材の違いを探したりと、参加者の好奇心も深掘りされていたようです。
休館日に特定の方向けに開催するプログラムの良さもありましたが、「普通の日にいろいろな人と一緒にいる中で、このような鑑賞体験ができたこと」を喜ばれる声も多くいただきました。

「フラットデー」の取り組みがますます浸透していくことを願います。
次回は「フィンランド・グラスアート〜輝きと彩りのモダンデザイン」展、8月9日が「ゆったり鑑賞日」です。(定員に空きがある場合は当日参加も可能です)