2017.1.7 絵本を読み解くワークショップ

2017.1.7 絵本を読み解くワークショップ

2017年1月7日、横浜市石川町のギャラリーFUで「絵本を読み解くワークショップ」を実施しました。絵本を題材とし、そこに描かれている絵から参加者同士の対話型鑑賞を行う試みです。

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11時。受付前に会場のレイアウトを行います。会場は絵本の世界に年明けの「おめでたさ」を意識して飾ってみました。ギャラリーの元々の空間が良いのでシンプルな飾りつけでも締まります。テーブル中央の畳には陶器のオブジェと茶筅を、会場控えの棚には過去に作った自作グッズも陳列しました。

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12時30分、少しづつ参加者が集まってきました。昨年夏の実施時は参加者1名で行いましたが、今回は定員6名で満席。キャンセル待ちまででる事に。どうなるだろうかと、ドキドキしながら「絵本を読み解くワークショップ」の始まりです。

今回のワークショップでは、1回2時間程度を想定し、同内容を13時の回、16時の回の計2回実施しました。流れは以下になります。

(1)自己紹介を兼ねたアイスブレイク。ファシリテーターによる大型絵本を読み聞かせを行ったのち、自己紹介と読み聞かせした絵本に関する問いかけについて語ってもらいます。
(2)お次にもう一冊別の絵本の読み聞かせ。こちらは標準の絵本です。こちらもファシリテーターの読み聞かせ後に絵本に関係するテーマについて参加者に語って貰います。
(3)いよいよメインワーク。「せんのりきゅう」の読み聞かせとそれぞれ手にとりながら自由に語って貰います。企画者も作者として意見を交えてのフリートークとなります。
(4)最後に今回用いた絵本3冊に共通する「裏テーマ」を種明かして解散

以上を順を追って紹介していきます。1回目と2回目での盛り上がりが好対照だったので、比較する形で書き記していきます。

(1)まずはアイスブレイク。両回共に年齢もバックグラウンドもバラバラな集い。絵本に関する元々の関心も人それぞれです。当然、緊張した空気がたちこめます。読み聞かせ後にファシリテーターから「あなたのニックネームと殻を破った経験を語って下さい」という投げかけ。

1回目では最年少参加の中学生が真っ先に手を挙げ、学校で殻を破った経験を語ってくれました。場の雰囲気は次第にほぐれていき、早々に深い話まで発展しました。2回目は対照的に最初の一声が重く、中々場がほぐれませんでした。途中、最初に今日の流れを伝えそびれていた事が発覚し、そのせいもあって参加者を困惑させてのスタートなりました。

(2)お次にもう一冊、別の絵本の読み聞かせ。今度は「好きな私、嫌いな私」をテーマにして語ってもらいました。1回目の参加者たちは、だいぶ場がほぐれ安心して語れる空間ができ、日本や社会学校での生きづらさなどなど、プライベートな領域までじっくりと話してもらいました。2回目はギャラリーの方がお茶とお茶菓子をふるまって下さり、一服交えながらの語らい。そのおかげもあってか、少しづつ場もほぐれてきました。

(3)いよいよメインワークの「せんのりきゅう」の読み聞かせです(1回目ではこの前に小休憩を兼ねて一服を挟みました)。ここまでの絵本ではその「物語」を元にテーマを投げかけました。メインの絵本「せんのりきゅう」は表紙からは想像がつきませんが、実は先の2冊と毛色の違うナンセンス絵本。この流れに対する反応も各回で好対照でした。1回目ではファシリテーターの読み聞かせ最中から笑いが起き、読み終わると「なんだこれは!」と即座に大盛り上がり。(1)(2)を通じて参加者同士の安心感が築けたこともあり、すんなり受け入れられた上、フリートークを交えながら視覚的に絵本を味わってもらえました。

対する2回目はファシリテーターによる読み聞かせが終わるとしばしの沈黙が流れました。滑ったかなぁと内心ヒヤヒヤしましたが、次第にぽつりぽつりと感想が。1回目とは異なり、(1)(2)の流れからの裏切りに驚く反応が多かったようです。次第に絵の読み解きや作者への質問が飛び交いはじめました。それに応える形で作者としての意図を話すと「えっそうだったの!」という驚きや新たな質問がうまれていきます。だんだんと絵本を介して場が盛り上がっていき、最終的には1回目以上にテーマである絵本の絵からの読み解きに発展していきました。「先に読んだ2冊があったからこそ、メインワークの読み解きが活きた」という意見も。

(4)最後にファシリテーターから今回選んだ絵本共通の裏テーマ「かわっていくわたし」を種明かしし、解散となりました。2回目の実施では種明かし前に裏テーマに関する言及も出てきました。

以上が一連の流れとなります。最終的に両回共にとても盛り上がったワークとなりました。作品(絵本)を介して参加者同士語らえた事はもちろん、絵本好きな人も、接する機会の少なかった人も絵本の様々な味わい方を発見できる機会になったと思います。作者としても「生の反応」に触れられた事でたくさんの発見を得られました。茶道を習われている方からの「絵本のタイトルがせんのりきゅうなので千利休について学べると思っていたらナンセンスな内容で驚いた。けれどもワークを通じ絵本を深読みしていく事で、実は本来の千利休の教えに近いものがあるのではないかと感じた」という意見は色んな意味で励みとなりました。

反省点も山ほどあります。特に「アイスブレイクでは絵本の絵からの鑑賞ではなく、物語に関する体験を語るという流れだったため、戸惑った」というワークの根本に関わる指摘については、今後特に整理していくべき課題だと感じています。

今回の実施を通じて、絵本を使ったワークショップの可能性を再認識しました。今後も会場や対象者をかえ、少しづつ改良を加えながら実施を続けていければと思います。

アート・コミュニケータ 小林大悟

photo by Shun Onozawa